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私の履歴書 マリアッチ
ミ☆マリリンの過去回想日記/よこちん編☆彡




大陸のはずれで地図も帰還スクロールも失って途方に暮れる僕の横に、彼はそっと擦り切れた帰還スクロールを置いて行ったんだ。


それが、彼、よこちんとの出会い。


彼は女の人の姿をしていたけど、本当は男なんだ。 アレだってついてる。

じゃあなんで女の人のフリをしているのか尋ねると、単に女の姿をしていたほうが鏡を見たときに興奮できるからだそうだ。

そして更に興奮する自分の姿に興奮し、更にその姿を見て、と簡単に快楽の頂点に達することができるらしい。

性別だけじゃなくて名前だって偽名だ。

これも単に自分が可笑しいと思えるから名乗っているだけなんだそうだ。 そう、彼は変態だった。

それも色んなジャンルの変態性を内包した変態。

僕だって自覚はないが変態と言われる。 そんな二人が意気投合するのにそう時間はかからなかった。



彼のおかげで無事にグルーディオの村へ戻ることができた僕は、いきつけの酒場で彼に一杯奢ることにした。

この酒場はイザカヤと言われる店構えで、どうやら遥か東の遠き国での一般的な酒場の形式らしい。

どうしてそんな店を開いたのか、また、開くことができたのか、他にも色んな謎に包まれたここのマスター、サブリナさんはとても美人だから謎なんてどうでもよかった。

その謎めいた部分も彼女の魅力であることは認めるけれど。



「いらっしゃい。 あら、マリアッチ君じゃない、久しぶりね。 後ろの彼女はコレ?」


マスターはいたずらっぽい微笑みを浮かべながら小指を立てた。 その仕草もとてもセクシーだ。

しかし僕は動揺を抑えて否定することにした。

「い、いえ、違いますよお。 それにこの人おと──」

男、と言い終えぬ内に背筋に激痛が走った。

後ろを振り返ると僕の顔をねめつけるよこちんの顔が。

どうやら背筋を通る神経系に直接アイスボルトを食らわされたらしい。 いやヘタしたら死ぬからやめろって!



「さっきの鏡のこともそうだけど、この姿だと色々得することもあんだよ。だから黙っとけ」

「は、はい……」



僕はケルティル倒すだけで休憩を必要とするひ弱なナイト。

彼は1ミリも違わず神経にアイスボルトを直撃できるクレリック。 その差は歴然だ。

っていうかクレリックなのに!? 聖職者なのに!? これじゃあまるで生殖者だよ。

とりあえず僕は従っておくことにした。 クレリックなのに……。



いつも一人で来るのでカウンターだけど、今日は乾燥させた植物の葉を編んで作られた板の敷いてあるザシキと呼ばれるスペースに通された。

正直言って僕はこのザシキが好きじゃない。

この板の匂いが嫌でも故郷で牛の世話をしていた頃を思い出させるんだ。 マスター美人だからいいけど。



とりあえず僕はボイルドビーンズに串刺しチキンの炭火焼とエールを、よこちんはジントニックだけを注文した。

イザカヤに初めて来た彼は、どうやら横の冒険者がうまそうに食べる生の魚の切り身を見て食欲をなくしたようだ。

おいしいのに、生魚。 だけど少し申し訳ないことをした。


「すまんね、ちょっと食べられそうなモンないみたいね。 食べてみるとすごくおいしいんだけどね」

「いやいいよ、元々俺も酒飲むときはあんま食べないし。つーかマスターが美人なので全て許すよ。 俺さ、眼鏡っ子とかはどうでもいいんだけど、ああいう美人が眼鏡をかけた姿には興奮する。 この違い、わかる?」

「わかんないしどうでもいいよそんなこと。 とりあえず乾杯すべ。 無事を祝ってカンパーイ」



戦いに疲れた体に冷たいエールが染み渡る。 最高だ。

まあ今日は迷っただけで戦いなんかしちゃあいないけど。 よこちんはというと、一気飲みしすぎてむせているようだ。

戦いに関しては僕より一枚上手な彼だけど、こういう姿を見ると年下なんだなあ、と実感される。

それに、見た目だけは女の子だし……いやいけないいけない! 背骨にアイスボルト食らわすような人間だぞ! 

僕はよこしますぎる邪念を振り払うのに苦労した。



その後2時間ほど和やかな雰囲気で談笑は続いた。



「つまりね、俺はアンデッドは走っちゃいけないと思うわけ。ゆっくりにしか動かないからこそこっちにも勝機がある……! と見せかけてドレインエナジー食らって即死とか、そこにロマンを感じるわけよ。 そういう意味ではルーインゾンビリーダーとか理想だね。 なのにネクロマンサーの呼び出すアンデッドときたら、腐敗する者だっけ? あれ速すぎ。勝てる気しないもん。 ロマンがねえよロマンが。」

「うぜー、こいつと舞台やゾンビの話するのめんどくせー。うぜー、マジう──」


少しだけ僕の心に傷をつける発言をした瞬間、彼の動きが止まった。


「……よこさん……? おい、どうしたのよこさん!」

「……」


持ち上げたグラスもそのままに、彼は微動だにしなかった。 ジントニックの飲みすぎがいけなかったのだろうか。 

だけど酔っ払いの症状でこんなの見たことない。 一体どうなってしまったんだ!


「……」

「おい、おい、聞こえてるか!? どうしたんだよー!」


酒場中の奇異の目が僕に集中する。 構うもんか。 今、目の前で大事な仲間が大変なことになってるんだ。


「よこさん、よこさん!」

「──ぜー。 ……あー苦しかった。」


僕の心配をよそに、突然彼は動き出した。 よかった。

しかし一体なんだってこんなことに。 ただのいたずらなのか?


「はぁ〜、心配したよ。 いきなりどうしちゃったの?」

「いや、ただのウイルスチェックw こいつが起動する度にリネのクライアント止まるのよwww あーウザスwwwwwwww リネマジ重すぎ! ウイルスソフトも糞!」

「ちょwwwwwwクライアントとかウイルスってwwwww空気読めってwwwwwwwwwロールプレイしてんのwwwwwwwwwww」

「ふんちょろぺー(^v^)」

「ズコー =⊂○=」



僕はそっとログアウトした。

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